煮るよ。

#煮るよ

2022-05-09 ダイダイ&宇和ゴールド&レモンマーマレード

ダイダイ、お前まだ残ってたのか…。

ということで、時期の良い宇和ゴールドと合わせてマーマレードに。

 

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宇和ゴールドとは、ジューシーオレンジとか美生柑とかと同じで、河内晩柑の地域ブランド(宇和ゴールドだから、宇和島あたりのブランド…たぶん…)。河内晩柑は文旦の偶発実生だそうで、和製グレープフルーツと呼ばれたりもするように、さわやかな甘味と酸味が美味い。和製グレープフルーツなら、ダイダイとの相性も良いだろう。

 

さて、今回ちょっとレシピの上で試してみたいことがある。

このところのマーマレード界隈ではよく「カラメル臭」に言及されることがあって、マーマレードアワードの講評にも書かれてた。要するに砂糖を加熱しすぎてカラメル化してしまうことで風味を損なうよ、ということ。ならば砂糖を加えるのは出来るだけ後にして、その後の加熱は最低限の時間にしましょう、というのが対策になる。

ただ、どうしても煮詰める時間をとらないとペクチン濃度が十分でなかったりする。

それなら、ペクチン液だけでできるだけ煮詰めておいて、そこに果汁と果皮を加え、最後に砂糖を入れて仕上げれば良いのでは?ということになる。なんなら、砂糖を加えた後は一煮立ちさせるだけで出来上がり、というのが理想である。

しかし、ここで問題がある。ペクチン液をどの程度煮詰めたら適当なペクチン濃度になるのかを評価できない。ペクチン濃度の定量など、それなりの設備がないと難しそうだし、だいたい毎回のマーマレード作業中にそんなことやってられない。なにかしら、目安でいいので、ペクチン濃度を簡単に調べる方法がないものか。エタノール加えてできるゲルの粘度を測るとかもあるかもだけど、できれば温度に依存しない方法がいい(家庭では温度の管理が難しいので…)。

 

で、ちょっと話が飛ぶのだけど、ここまでの話とまったく無関係に「糖度の測定」について調べてたら「糖度は屈折率によって測定するが、溶液の屈折率には水溶性固形分全般が影響するので、ジャムにおいてはペクチン濃度なども反映されることになり、必ずしも糖の含有量を意味しない」という衝撃の事実が判明。いや、言われてみればそうだろうなという気はするし、ペクチンも糖の一種である(複合多糖類)ことも知ってたけど、糖度計は「糖=甘さ」を測ってるという認識にあんまり疑いを持ってなかった。

いやしかし、逆に考えると、砂糖を加えない段階で糖度を測ったときの値が、イコールペクチン濃度ではないかもしれないが、ペクチン濃度の指標としては使えるのでは?何回かテストしてペクチン液を煮詰め方がわかれば、そのときの糖度まで煮詰めればいいということにできないか。

つまり、果皮を茹でて、その茹で汁すなわちペクチン液を煮詰めていって、ある糖度になったらそこに果汁と果皮と砂糖を入れて煮立ててればできあがり、と。まあそう上手いこといかないとは思うけど、試してみる価値はある。

 

ということで、まずはダイダイと宇和ゴールドとレモンの果汁を搾って、果皮を刻む。刻むときに、ワタを外果皮から手で外すのではなく、ナイフで削いでみた。これはダイダイ&ゆずマーマレードでやったのだけど、その仕上がりがやたら透明度が高かったので。

 

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刻んだ果皮を1時間茹でて、果皮だけを引き上げ、ペクチン液はそのまま煮詰める。

 

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と、当初の糖度を測ってみたところ、約5度。多少は糖が含まれてるだろうけど、舐めると甘みはまったく感じない。ためしに糖度5のショ糖溶液を作ってみると、けっこう甘い。やっぱり糖以外のなんかを糖度として測っているのである。

ペクチン液はできるだけ濃く煮詰めてみる。煮詰めていくとトロみが強くなるので、ヘラでかいたときに鍋底が見えるくらいまで。それ以上やると焦げそうだし。このときの糖度は10まで上がってた。よしよし、ちゃんと濃縮されてるな。

このあとの工程ではできるだけ煮詰めない所存なので、グラニュー糖は多めに全重量の80%を量る。ペクチン液に果皮を入れて火にかけ、煮立つごとに果汁とグラニュー糖を3分の1ずついれていく。すると、ほとんど煮詰める時間を取らずに糖度が60を超えたので、もうできあがり。

 

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これまでのレシピに比べたら加熱時間は断然短い。ただ、ペクチン液をかなり煮詰めているので、そこで風味に悪影響があったりしないか。まあ、食べてみての味次第。

 

瓶詰めして一晩冷ましたら、ゼリーがわりとゆるい。リンクルテストもして問題ないと思ったのに!

とか言ってたら、もう1日おいたらきれいに固まった。そういうことはたまにあるのだけど、どういう理屈なんだろう?ペクチンが固まるのは細長いペクチン分子どうしが架橋されるかららしいけど、その反応がゆっくり進むから?あるいは、今回は仕上げ時に果皮を煮る時間が短いので、まだ果皮中にペクチン成分が残っていて、瓶詰めしたあとも滲み出しだりするんだろうか。粘度を考えると自然に分散するとも思えないけど。

まあ、とにかくきれいに固まったのだからヨシ。ペクチン液の煮詰め方として、今回程度で問題ないという結論に。

ただし、材料によって成分が違ったりする可能性はあるので、都度テストしてみる必要はあるとおもう。まあ、普通そういうもんだよね。

 

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さて味見。うんうん、かなり良い。

糖度は高めだと思うけど、しつこさ、キツさはまったく無いし、風味も良い。方向性は良さそう。このレシピをもう少し研究していきたい。

透明感はまあまあかなあ。煮てるときから少しクズが出る感じはあったので、ダイダイ&ゆずのときのような美しさはない。刻み方を少し薄くしすぎたか。

ちょっとミスったのは、レモンの果皮が固い。レモンだけもっと長めに茹でるべきだった。最初から混ぜちゃったので分けようがなかったんだよね…かといってレモンに合わせてぜんぶを長時間茹でると、レモン以外が崩れてしまうなど支障がありそうだったし。しかしどちらかというと、果皮が固い方がマーマレード的にはよろしくない気がする。食感が、固いだけじゃなく、口の中に残るんだよね。あれは良くない。

 

 

2022-05-09 ゴールドキウイジャム

キウイはけっこうジャムにしやすい果物。しかも、ほぼ一年中どこでも手に入るので、初心者にもおすすめ(何様)。

キウイは追熟するので、果肉が柔らかく甘味と香りが強くなってからが食べ頃だが、ジャムにするなら固めの方が向いている。果物の固さは基本的にペクチンなので、固め即ちペクチンが多く仕上がりのトロみが良くなるし、未熟な方が酸味がハッキリしていて砂糖を加えたときの風味が良い。ただ、熟した方が香りが強いので、それを活かすにはどうしたらいいかなあ、完熟と未熟を混ぜたらいいのかなあ、などと考えたりはする。

よく、熟しすぎて食べ頃を超えて柔らかくなってしまったものをジャムにして救う話を聞くが、まあ捨てるよりはジャムにしていただく方がもちろん良いのだけど、フレッシュな風味のジャムを作るには、フレッシュな果実を使わなければならない。手作りジャムにおけるよくある誤解である。

 

キウイでも、ゴールドキウイのジャムは特に美味いと思っている。ゴールドの方が未熟でも香りと甘みが強いし、グリーンのような青臭さも残りにくい。まさにジャム向き。

なお、「ゴールドキウイ」という言い方はたぶん黄肉種のキウイの俗称で、いちばんよく見るものは品種名で「サンゴールド」である。で、サンゴールドというのはゼスプリ社の開発した品種で、同社が持つ商標。いちおう、サンゴールド以外にもゴールドの品種というのは存在して、国内でも栽培されているけど、その辺のスーパーとかではまず手に入らない。まあ、キウイに関してはニュージーランド産を普通に使ってる。品質が安定しているので。あと、キウイブラザーズファンなので。

 

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ということで、ニュージーランドゼスプリ・サンゴールド。

そこそこ未熟な感じで、皮付近はわずかに緑色。酸味もありつつ甘みもあり、良いコンディションと思う。

キウイはくし切り→3mmくらいの薄切りに。70%の重量のグラニュー糖を計量して、半量をキウイに混ぜる。

以前はそれで水分が出たらそのまま煮はじめてたのだけど、今回は最近の流行りで(本ブログ内の)、潰す。マッシャーでそこそこ潰すと水分たくさんの状態になるので待ち時間も必要ない。

 

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そのまま鍋に入れて煮始める。灰汁を取って砂糖を追加しつつ煮詰めて、とろみがいい感じになったら火を止める。

…と、その前に、仕上げにテキーラを少々入れて、煮立たせてできあがり。キウイだけだとシンプルに美味しいものの、ちょっと風味が物足りない感じなので、合いそうな酒ということでテキーラ。キウイジャムをテキーラで割って飲むとゴキゲンな味がして美味いのは知ってたんだよ。

 

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やや固めだったのが良かったようで、ジャムとしていい感じのとろみに仕上がった。そしてなにしろゴールドキウイ、味のバランスが良い。テキーラも、たぶん言われないと(言われても?)それとわからない程度の風味だけど、良い仕事をしている。

 

最近やたらと洋酒を使うようになってしまったが、やはりなかなか使い方が難しい。というか、酒についての知識が少なすぎて、どの酒はどんな風味があって、どんな材料に合うか、とかがまったく想像できない。

そこで思いついたのが、フレッシュフルーツを使ったカクテルのレシピを参考にしてみること。例えばゴールドキウイで見つけたのは、ウォッカと青リンゴリキュール。なるほど…そんなん絶対思いつかんわ。

しかし青リンゴリキュールか…そのためだけに買うのもなあ。自分で仕込めるかな。

 

2022-05-05 こしあん

たまに小豆も煮ます。

今回は5月5日に向けて、柏餅用にこしあん。柏餅にはこしあんだと思うので。

 

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小豆は近所のスーパーで適当に買った十勝産。小豆、その辺のスーパーでもそれなりのものがすぐ手に入る手軽さが良い。特にこしあんは大粒である必要などもなく(濾すので)、有機栽培とか生産者指定などこだわることはできるが、それでも言うほど高級というわけでもない。

 

小豆はすぐに煮はじめられるのも良い。皮が薄いから、煮豆を作るときみたいな浸水工程(水に浸けて一晩おくとか)は必要ない。そういえば、とある「あんこを題材とした小説」を読んだとき、わりと冒頭で小豆を一晩水に浸けはじめたものだから、それ以降読んでもまったく頭に入ってこなかったよね…。そういう流派もあるのかと思ったけど、その後に見かけたあんこのレシピで浸水するものはひとつも見つけられてない。

 

すぐに手に入って、すぐに煮はじめられる。これがつぶあんなら、2時間もしないで仕上がり、最高に美味しいできたてあんこが手に入る。

…が、いまは、こしあんである。

こしあん、特に難しい工程があるわけではないが、やはり手間はかかる。つぶあんを作って濾せばいいわけではないのである。

 

1時間ほど下茹でをして柔らかくなった小豆を濾すのだが、これがまず、一度にぎゅうぎゅう濾せるわけじゃない。工業的にはそういう機械もあるかもしれないが、家庭においては「濾し網にのせて濾したときに外に落ちない程度の量」が1サイクルになるので、たいへん効率が悪く、時間がかかる。

しかしまあ、単純作業、嫌いではない。「チカラを込めすぎると皮が削れてあんこ側に入って口当たりを悪くしたりするんだろうか?」「濾し網はもっと細かい方がなめらかに仕上がるんだろうか?そんなことしたらさらに作業スピードは落ちそうだな…」とか考えながら濾す。疑問の答えはわからないが、小豆は濾される。

 

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濾したもの、つまりこしあんの本体が左で、こしあん的には不要なのが右である。間違って左の泥水を捨てたりしたら、文字通りすべて水の泡である。

 

次に水に晒して上澄みを捨てる。こちらは作業としては大したことはないが、晒し1回につき10分程度置く必要があるので、やはり時間はかかる。それでも、最初は泥水にしか見えない上澄みが、4回くらいでほぼ透明になるさまは大変気持ちが良い。(しかし正直、このとき上澄みとして捨てているものがなんなのか、まったくわかっていない。)

 

あとは搾って砂糖加えて煮詰めればできあがり。そこらへんはつぶあんと大差ない。

 

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そうしてできあがった、つやつやのこしあん

こしあんを手作りすると、こしあんの尊さを理解してしまい、つぶあん原理主義ではいられなくなる。こしあんを発明した人にはノーベル賞くらい与えられて然るべきである。

 

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そういえば、そもそもの目的である柏餅。こしあん作るのに疲れて、餅のほうで手を抜いたため形が不揃いですみません。あと葉っぱは無い。去年は別に作ったよもぎ餅を薄く伸ばして「葉っぱも食べられる柏餅」なんて凝ったことをしてたが、今年は心の目で見る仕様です。

なお、柏の葉っぱは富澤商店とかで売ってるみたいなので、来年は普通に買おうかな…。あとは日頃から柏餅を買って食べて、その葉っぱを残しておくとか?

 

2022-04-27 いちごジャム

「いちごだけは煮る」っていう人はけっこう多い。

普段はジャムなんかやらないけど、いちごのシーズン、特に4月下旬〜5月にかけて安いいちごが出回る時期に大量購入して煮る。こういうのは、いちご以外の果物にはあんまり見られない現象だと思う。まあ、定量化したわけじゃないというか、インスタの「#手作りジャム」タグを追いかけてるだけの印象だけど。

印象ついでのわたしの仮説では、人類には本能的に「果物を煮て瓶に詰める欲」が備わっていて、一定の条件を満たすと煮てしまう習性がある。条件とは要はコストとベネフィットであり、手に入れるコストや作業コストがじゅうぶん低く、そして当該ジャムを得ることのベネフィットが大きければ、煮る行動がみられるようになる。当たり前っちゃ当たり前か。

いちごは「どこでも」「安く」手に入り、「簡単に」ジャムを作ることができる。そして出来上がったいちごジャムはめっちゃ赤くてきれいで、めっちゃ美味しい。つまり大変に「煮る行動」の条件が整いやすいのが、いちごである。

りんごは安いけどちょっとめんどくさい、ブルーベリーは楽だけどちょっと高い、マーマレードは見た目に美しいけどとても手間がかかる。すももなんかは比較的安くてどこでも売ってて簡単で美味しいしソルダムジャムとかめっちゃきれいなのでオススメなんだけど、結局のところ「いちごジャム」の王道感には勝てないのである。ていうか人類、いちごジャムに何か特別な感情がありますよね?

 

たくさんの人が作るいちごジャムなので、レシピも多様である。多様かつ、だいたいどんな作り方をしても美味しいのがいちごジャムのすごいところ。一応、レシピを分類する大きな軸としては、「いちごを潰すか潰さないか」「砂糖をどれくらい入れるか」が考えられる。

自作ジャムだと「いちごゴロゴロ」「砂糖控えめ」が選択されがち。果肉感が強く、いちごのフレッシュさを詰め込んだ仕上がりである。見た目としては透明感のあるいちごシロップの中に果肉が浮いている感じで素敵。いわゆるプレザーブスタイルというやつか。

ただ、使おうとするとシロップが垂れ、トーストから果肉が転がって服を汚すので、個人的には苦手。垂らさないように気をつけろと言われると返す言葉もないが、言い訳すると、子供が使うことを考えて(いちごジャム、子供に断然人気なので)避けられるトラブルには対処しておきたいのである。

なので、わたしのいちごジャムは、いちごをわりとしっかり潰して、砂糖は多くして粘度を上げる方向性。人呼んで「ただのいちごジャム」である。

一時期は他から抽出したペクチンを使ったりして、より市販ぽいいちごジャムを目指しもしたが、さすがに何やってるかわからない感が強かったので、今はごくシンプルなレシピを採用してる。

つまり、いちごを洗ってヘタを取って潰してグラニュー糖を入れて煮る、基本それだけ。グラニュー糖は多めの70%を量り、3分の1をはじめに加えて火にかけ、煮詰めながら順次3分の1ずつ加えていく感じ。強めの火で短時間で煮ていくようにすれば、色もきれいだし、砂糖が多くてもいちごの風味は損なわれない。

 

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今回は栃木県産とちおとめ使用。不揃いで安かったので。

いちごジャムには新鮮ないちごを買って使うべきだけど、不揃いなのは問題ないのでお得に利用したい。

 

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いちごをマッシャーで潰して砂糖と混ぜたところ。けっこう頑張って潰してます。実がバラバラになるくらいに潰さないと、仕上がりで潰した雰囲気が出ない。いちごは煮溶けることがなく、潰し具合がそのまま仕上がり具合になるので。手でやったりした方が早いかもしれない。

このくらい潰して砂糖を多めに入れると、ペクチンを添加して固めなくても、けっこう粘度が出てジャムっぽい感じになる。さらに強く煮詰めたらかなり固くなるとは思うけど、その辺は風味とのバランスかなあ。オーブンドライするレシピなんかは、たぶん煮詰める時間を短縮しつつ濃度を上げる目的でしょう。

 

あと、いちごジャムは美しくなくてはいけないので、灰汁の泡をちゃんと取り除くのが大事。ただ、最後どうしても残るので、火を止める直前に混ぜるのを止めて煮立て、泡を表面に浮かせてから火を止めて、ヘラで泡を1箇所に集めておいて、最初にその部分を自宅用なり味見用として別に取ってしまうと、残りの瓶がきれいにできる。豆知識。

いや、全部自宅用じゃない人の方が少ないかもしれないけど、それでも並べるならきれいな瓶のほうが気分が上がるよね。

 

あ、今回はキルシュを入れる。

 

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小さじ1だけ入れて煮立ててアルコールを飛ばしてできあがり。風味に奥行きがでる、はず。

 

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こんな感じのできあがり。

赤がきれい!この深く鮮やかでツヤのある赤は、やっぱりいちご以外では作れない。いちごがジャム四天王の筆頭に君臨し続ける所以である。ただし、赤色は保存するうちに褪色してしまうので、きれいな色を愛でるなら早めに食べた方が良いです。

そういえば、頑張って潰したわりには見た目にけっこう実残りがある。まあ、このくらいは手作り感が出て良いか。逆に、けっこう頑張って潰してもこのくらいは実が残るので、ごろごろいちごジャムが良いという人でも、ある程度潰してあげてもいいと思う。半分取り分けて半分はしっかり潰すとかでもいいし。

 

ところで、最近買ったこのレードル(上の写真のやつ)がすごく良い。小ぶりで、その割に深さがあって、注ぎ口が丸くなってて、ジャム瓶に注ぐために作られたかのような(たぶんそう)使いやすさ。

これ↓

www.prokitchen.co.jp

 

見た目もかわいいし、良い買い物。

 

あと、宣伝(?)ついでに、この、シリコン手袋。

 

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これも最近買ったんですがめっちゃ便利。手のひら側にトゲトゲがついてて直接触れないので、熱いものも持てる!とげとげ付いてないところは普通に熱いのでお湯に手を突っ込んだりはできないけど、煮沸した瓶を鍋から引き上げるくらいならできる。あと、ジャムを垂らして汚しても水でサッと流せば良いのは、布巾やミトンに比べても良いところ。

このシリコン手袋に上記の横口レードルを併用すれば、なんと熱い瓶を手に持ちながらレードルで直接瓶に注げる!瓶詰めにはいままで広口の漏斗を使ってたけど、もう不要!作業効率が段違い!ジャム煮のみなさんぜひ!

 

2022-04-14 カルテットマーマレード

いざとなったらヤケクソで手持ちの柑橘全種類入れてやってみよう!5種類あるからクィンテットマーマレード

と思ってたら前回でグレープフルーツを使い切ったので、夏みかん、ダイダイ、レモン、ゆずのカルテットになった。

 

いずれにしても、どうなるのか?あまり予想がつかない…しかしまあ、それぞれに強いキャラクターがあるし、青春物語の中心はたいてい4人組だよね。主人公は夏みかんで。

 

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ここのところのマーマレードでは、柑橘の果皮を生で薄く刻んでから茹でてたのだけど、やや久しぶりに「搾ったら刻まずに茹でる」をする。

薄く切った方が茹で時間が短くなるかと思いきやそうでもないみたいだし、茹でてから刻んだ方が透明感よく仕上げやすいと思ってたけどこれも工夫次第でなんとでもなることがわかったし、これらの差はじつはあんまりないのかもしれないと思いつつある。

それでも経験的に感じているのは、生の方が薄く刻みやすいことと、先に茹でてしまう方が気分的に取り組みやすいこと。

前者はまあ、感覚的にもわかると思うけど、柔らかく茹でられたものを薄く(1mmとか)刻むのは、包丁をよく研いでいたとしてもなかなか難しい。包丁の剪断力に構造的な強度が耐えられない。下手をすると潰れてクズが出てしまい、見た目を損なうことになる。

そして後者、個人の感想でしかなくて恐縮だが、マーマレードはとにかく刻むのが面倒で、初っ端にそれがくると思うとたいへん憂鬱になるので、「とりあえず茹で始める」という工程のほうが勢いがつく。もちろんどちらにしろ刻むのだけど、「はじめに刻む」だと「始めない」という選択肢があるが(そして選択しがちだが)、すでに茹でてしまった後では「刻まない」わけにはいかない。あと、先述のとおり茹でてから刻むには薄さに限界があるので、結果的にやや厚めになり、すなわち手数が減るのでその分ラクでもある。と、ここまで詳しく説明したが、内容は「ずぼらですみません」でしかないな…。ほんとうにわたしでいいの…。

 

いや、言い換えれば、ずぼらな方むけのレシピである。

柑橘を全て半分に切って果汁を搾り、果皮をさらに半分にしてたっぷりめの水で茹でる。ゆずは柔らかいので、30分ほど遅れて投入。

 

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2時間ほど茹でたら果皮を取り出して、スプーンでしっかりワタを削ぎ、2〜3mmの厚みに刻む。茹で汁は目の細かい綱で濾し、茹で汁、刻んだ果皮、果汁の重量をはかる。

60%の砂糖を量って、茹で汁&果皮の鍋に果汁と砂糖を少しずつ加えながら煮詰め、リンクルテストで良いところを判断。

 

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今回はグランマニエを忘れない。小さじ1加えて煮立て、火を止めてできあがり。

 

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お、これは、全体の風味は案外よくまとまってる?そして、食べたときにいろんな味がして面白い。

複数種の柑橘で作るマーマレード、蓋を開けた時の香りは渾然一体としてるのだけど、それぞれの柑橘のピール自体はそれぞれの風味を保持してるから、ピールを噛むごとに異なる風味が口に広がる。これが2種類くらいだと、こっちのピールの風味はこっちの柑橘〜みたいに味わう余裕もあるが、4種類ともなると次から次へと異なる風味が飛び込んできて、もはやお祭り騒ぎである。口に含むたびにカルテットが賑やかに囃し立て、しかしなかなか良いアンサンブルなのでスプーンが進む。

ただ、なんでも4種類混ぜればいいかといえば、やっぱりキャラクターのバランスは考える必要があるように思う。今回たまたま良かったけど、レモンを抜いて甘い柑橘にしてしまうと酸味が不足しそうだし、たとえば夏みかんをオレンジに変えたりしたら風味が喧嘩を始める気がする。しかし、いろいろ試すには4種類では組み合わせの数が多すぎるので、まあ、センスですね。そして今回のは余ってたやつ使っただけなのでセンスとは関係ないため、次のカルテットをやる自信はまったくないです。

 

2022-04-03 グレープフルーツ&夏みかん&レモンマーマレード

柑橘といえども新鮮なうちに使うべきで、きれいに洗って一個ずつ新聞紙にくるんでビニール袋に入れて冷蔵庫、定期的に点検しては拭いて新聞紙を変えて、みたいな理想的な保管が実現できるのであればともかく、現実にはなんやかんやでカビさせてしまったり、乾燥して萎びてしまったりする。

そうなる前に使い切るのが最善策。幸いマーマレードアワード出品も終わり、いくつか手持ち柑橘の組み合わせを試したりしてとりあえず気が済んだので、あとはもう柑橘の鮮度低下と在庫処理のどちらが早いかである。

つべこべ言わずにさっさとやれば良いのだが、じつはわたしもジャム以外の生活があるので…なかなか難しいことも多いのです。まあ、腰とか瞼が重いだけってのも大いにあるけど。この辺は柑橘に限らずだけど、ジャム煮の人と話をしてるとけっこうみんな同じようなこと言ってて面白い。

 

今回は、マーマレードアワードにも送って、なかなか出来の良かったレシピでもう一度。グレープフルーツ&夏みかん&レモン。グレープフルーツはこれで終わり。

そうだ、↓で書いたけど、複数柑橘だし、リキュール入れてみるか。グランマニエが少しある。どんな違いになるかも試してみたい。

niruyo.hatenablog.com

 

レシピは前回と基本的に変えない。

まずは果汁を搾ってワタを外して、

 

 

果皮は薄切りにして茹でていく。

 

 

薄切りでも2時間茹でないと柔らかくならないことはわかっているので、はじめから2時間に決めて茹でる。

のだけど、今回も夜中にスタートしてしまったので、2時間茹でるとなると完全に朝までコース。ということで、刻むだけ刻んだ時点で(刻むのに1時間半かかってしまったので)寝る。

とはいえ日中の作業も何かと中断が入ることが多く避けたいので、翌朝早めから鍋に向かう。まあ2時間茹でてるうちに「日中」になってしまうのだけど。

 

 

ラニュー糖は60%で煮詰めていき、今回はそのまま仕上げ。前回は後から追加して65%にしたけど、この違いはペクチン液(果皮の茹で汁)の煮詰め方の問題かなあ。つまり、今回の方がペクチン液の当初の煮詰め方が弱くペクチン液の分量としては多いから、同じ仕上がり(糖度、ペクチン濃度、果皮の割合)に対してグラニュー糖の「%」が少なくなったと…いやしかし、じつは仕上がりのペクチン濃度が同程度という根拠は特に無くて、砂糖の追加は果皮の割合の様子を見て判断してる感じなので、ほんまかいなという気もしなくはない。不本意ながら「勘所」みたいな話になってきてしまうのか。ペクチン液の量をきちんと計量しておけば、例えば果皮の重量との比で定量的に決められるだろうか。

まあ、とりあえずはきちんと仕上がったのでヨシ。

 

 

 

 

…あ!

グランマニエ!忘れてた!

忘れないようにとコンロの脇に置いておいたのに!

 

まあいいか…

つまり前回と同じレシピになったので、あれがマーマレードアワードでなんか賞でも取ったら、そういうことにしよう。

 

2022-03-30 いちごレモンジャム

本ブログの記事一覧を見れば一目瞭然だが、今シーズンも相当数の夏みかんを煮ている。そしてレシピは混迷を極め、2周回って最後のチャンスでギリギリなんとか間に合った、というのがあらすじ。

 

しかし、ハッピーエンドの裏には、その犠牲となった数々の物語がある。そして、それらにきらびやかな最終回は用意されず、人知れず更なる物語を紡ぐのである。

 

いや、夏みかんマーマレードの試作品の中で、ちょっと許容できないな、という仕上がりのものについて何とかしようという話です。なお、タイトルは後で回収するのでよろしくお願いします。

ちょっと許容できない仕上がりとは、具体的には質感の問題。つまり「仕上がりがゆるすぎる夏みかんマーマレードをリメイクして良い感じにする」ことが目標だ。

では、マーマレードの「質感」とはなんなのか。

良いマーマレードの基準のひとつに「テクスチャ」「質感」と言われる項目がある。あまりに漠然としており、マーマレード沼の外からは何のことかよくわからないかもしれない。ちなみに他の項目は「外観」「香り」「風味」であるから、それ以外の何か、である。まあ、外観とも香りとも風味とも無関係ではいられないのだけど、しかしそれらの括りでは言い表せない、マーマレードの性質である。

個人的には次のように理解している。外観は目、香りは鼻、風味は舌による評価であり、そしてテクスチャを評価するのは手。スプーンでそのマーマレードをすくったときの、その手に伝わる感触である。固さ、と言えばわかりやすいが、固さを内包するもう少し広い概念である。

は?って感じかもしれませんが、これはまあ、実際やってみるとわかる。

柑橘のペクチンによるゼリーが、固すぎず、ゆるすぎず。スプーンを差し込む瞬間の確かな感触がありつつも抵抗なく、途中にプツプツと果皮と出会う「音」が聞こえる。掬い上げたときに滴り落ちるようではダメで、ぷるぷると質量のあるゼリーが、宝石のごとく光を乱反射してきらきらと輝く。

いや、例えばマーマレードアワードの審査員がどう考えてるのか本当のところは知らないけど、スプーンで掬えば「良いマーマレード」かどうかがわかると言うのは、わたしの個人的な見解としては、そういうものです。

この「質感」が私個人の感覚に鑑みて及第点に達していない、今回で言うとゼリーがゆるすぎると判断された夏みかんマーマレードのいくつかのロットを回収。いくつかといっても結構多い。全部で10瓶以上あるぞ。大丈夫かこれ。

 

どのようにして修正していくか。

いちばん簡単に考えられるのは、さらに煮詰める。これは単純にペクチン濃度を濃くすることで固める戦略だけど、じつはこれら「ゆるいマーマレード」は、初めから砂糖を多く入れてしまった結果として煮詰め方が足りないためにペクチン濃度が低いと考えられる、というものなので、ゆるいクセに糖度が高い。したがって、これを単純に煮詰めてしまうと、おそらく固まりはするだろうが、甘みがキツいことになりそうである。

ペクチン濃度濃いめの夏みかんマーマレードを作って混ぜる、という案もあり得る。ちょうどよく固まるペクチン濃度を100として、仮に今のゆるいマーマレードが80なら、新たに120のマーマレードを作って混ぜればペクチン濃度100のマーマレードができるのでは、という理科の問題。悪くないが、相当量の夏みかんマーマレード同士を混ぜることになるので、出来上がってくる修正夏みかんマーマレードの量が恐怖。そもそも夏みかんの在庫が少なく、多量のゆるめ夏みかんマーマレードを中和するだけの量が作れないので、実現不可能だ。

あとはもう、他からペクチンを持ってくるしかない。ペクチンが多いといえばレモンである。レモンなら手元にそこそこの数がある。また、濃度の高いペクチン液が取れれば、マーマレードの分量がいたずらに増えることもないだろう。はい採用。

とはいえ、やったことがないのでちょっとどうなるかわからないが…まあ夏みかんにレモン入れて不味くはならんやろ。

 

工程イメージは
・レモンを刻んで茹でてペクチン液を取る
・よく煮詰めてペクチン濃度を上げる
夏みかんマーマレードに茹で汁と果汁を加える
・この時点での糖度を測って、50度くらいまで砂糖を加える
・60超えるまで煮詰める
くらいの感じ。いちおう「夏みかんマーマレード」としてリメイクしたいので、レモンはペクチン抽出液と果汁だけ利用して、果皮を加えることはしない。

 

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まず、レモンを搾ってワタを外し、果皮は内果皮を少し残して削ぎ、薄切りにカットする。ワタやら削いだ内果皮やら果汁を濾した屑やらは鍋に入れて煮出しておく。

別の鍋で果皮を熱湯から茹でていく。いつもは1時間くらい茹でる中で茹で汁が減ってきたら水を足していたが、今回は「水を替える」ことにする。茹で汁はワタを煮出してる鍋に入れて、こちらも煮詰めていく。

1時間ほど茹でる間に水を3回替えた。これで、レモンの果皮はそこそこ柔らかく、また苦味がしっかり抜けている。つまりペクチンをレモンの風味がしっかりと茹で汁の方に移っている、と良いなあ。

上記の想定のとおり、夏みかんマーマレードを瓶から全て出して、そこにレモンの茹で汁を加えて混ぜてやる。で、糖度を測ると51度と出た。なるほどそれなら砂糖の追加は無しで、このまま煮詰めはじめる。

 

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点火して煮詰めていくが、案の定、鍋の中身の量が多くて辟易する。こういうのは結果的に加熱時間が長くなってしまうので、あまり良くなさそう…

また、混ぜた当初、色が曇ってしまった感じがしたが、火にかけたらある程度透明感が戻った。冷えた夏みかんマーマレードペクチンが、粒状に分散して混じり合わなかったのではないか、それが加熱で溶けて透明に戻ったのではないか、と考えてるけどよくわからない。

途中、レモン果汁の半分を加えて、温度やリンクルテストで判断して火を止める。

それにしても多い。これだけ大量だと、瓶詰めして煮沸消毒するだけで一仕事である。

 

一晩冷まして、翌朝に具合をチェック。毎回、不安と期待の入り混じる、まあまあ緊張の瞬間である。

 

結果は…ゆるい!

全然固まってない!つらい!まったく無駄な手間だった!

と、がっかりしたのだけど、3日ほど経ってから見たら固まってた。

なんだよ!よかったよ!この、「後から固まる」原理はなんなのか、誰か教えてください。

 

ただし、固まったのは良かったものの、どうしても全体の加熱時間が長くなってしまったので、色味・風味は劣る。その辺はがっつりリキュールなど足してリメイクした方が誤魔化せたかもしれない。

あと、やはり全て一度にやるには量が多すぎたと反省。小分けにしていろんな方法で試した方が良かったな。あまり時間と手間をかけたくないと横着したのが仇となった。

 

こうして、夏みかんマーマレードの後日譚は多少の反省を残しつつ、無事に幕を閉…

いや、待って、ここにレモンの皮の茹でたやつ(と果汁半分)が残ってるんだけど。

 

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レモンマーマレードにするには、ペクチンを回収してしまったし、苦味も抜いてしまったし…うーむ、レモン…レモン…

あ、以前、いちごジャムにレモン果汁を多めに搾ったららさっぱりして美味しかったやつ、あれを参考にしてはどうか。

 

ということで、満を持しての、いちごレモンジャム。

 

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これはシンプルに、いちごジャムを作ってそこにレモン果汁とレモン果皮を加えるのみで良いでしょう。砂糖の量も、いちごの70%で決めてしまう。レモン果汁とレモン果皮分を考慮しても良いけど、さっぱり感推しでいくならその分無しでも良いかと。新たに計量して洗い物増やすのが面倒だっただけ、というのが本音ですが。

 

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案の定、さっぱりしたいちごジャム、そしてレモン果皮が加わったことで食感に変化があって結構良いのでは?見た目もかわいい。レモン果汁と果皮の水分足しただけ、もう少し余計に煮詰めてもう少しトロみがあったほうが好みかも。

悪くないレシピだと思うけど、レモンは今回みたいにがっつり茹でこぼさないとかなり苦いので(そして苦味といちごは共存しづらいので…)、このために一から始めると案外面倒だなという感想。

もしやるなら、せっかくだからもう一工夫しても良いかなあ。ミント入れてみるとか。