煮るよ。

#煮るよ

2022-05-09 ダイダイ&宇和ゴールド&レモンマーマレード

ダイダイ、お前まだ残ってたのか…。

ということで、時期の良い宇和ゴールドと合わせてマーマレードに。

 

f:id:uncountable:20220607203606j:image

 

宇和ゴールドとは、ジューシーオレンジとか美生柑とかと同じで、河内晩柑の地域ブランド(宇和ゴールドだから、宇和島あたりのブランド…たぶん…)。河内晩柑は文旦の偶発実生だそうで、和製グレープフルーツと呼ばれたりもするように、さわやかな甘味と酸味が美味い。和製グレープフルーツなら、ダイダイとの相性も良いだろう。

 

さて、今回ちょっとレシピの上で試してみたいことがある。

このところのマーマレード界隈ではよく「カラメル臭」に言及されることがあって、マーマレードアワードの講評にも書かれてた。要するに砂糖を加熱しすぎてカラメル化してしまうことで風味を損なうよ、ということ。ならば砂糖を加えるのは出来るだけ後にして、その後の加熱は最低限の時間にしましょう、というのが対策になる。

ただ、どうしても煮詰める時間をとらないとペクチン濃度が十分でなかったりする。

それなら、ペクチン液だけでできるだけ煮詰めておいて、そこに果汁と果皮を加え、最後に砂糖を入れて仕上げれば良いのでは?ということになる。なんなら、砂糖を加えた後は一煮立ちさせるだけで出来上がり、というのが理想である。

しかし、ここで問題がある。ペクチン液をどの程度煮詰めたら適当なペクチン濃度になるのかを評価できない。ペクチン濃度の定量など、それなりの設備がないと難しそうだし、だいたい毎回のマーマレード作業中にそんなことやってられない。なにかしら、目安でいいので、ペクチン濃度を簡単に調べる方法がないものか。エタノール加えてできるゲルの粘度を測るとかもあるかもだけど、できれば温度に依存しない方法がいい(家庭では温度の管理が難しいので…)。

 

で、ちょっと話が飛ぶのだけど、ここまでの話とまったく無関係に「糖度の測定」について調べてたら「糖度は屈折率によって測定するが、溶液の屈折率には水溶性固形分全般が影響するので、ジャムにおいてはペクチン濃度なども反映されることになり、必ずしも糖の含有量を意味しない」という衝撃の事実が判明。いや、言われてみればそうだろうなという気はするし、ペクチンも糖の一種である(複合多糖類)ことも知ってたけど、糖度計は「糖=甘さ」を測ってるという認識にあんまり疑いを持ってなかった。

いやしかし、逆に考えると、砂糖を加えない段階で糖度を測ったときの値が、イコールペクチン濃度ではないかもしれないが、ペクチン濃度の指標としては使えるのでは?何回かテストしてペクチン液を煮詰め方がわかれば、そのときの糖度まで煮詰めればいいということにできないか。

つまり、果皮を茹でて、その茹で汁すなわちペクチン液を煮詰めていって、ある糖度になったらそこに果汁と果皮と砂糖を入れて煮立ててればできあがり、と。まあそう上手いこといかないとは思うけど、試してみる価値はある。

 

ということで、まずはダイダイと宇和ゴールドとレモンの果汁を搾って、果皮を刻む。刻むときに、ワタを外果皮から手で外すのではなく、ナイフで削いでみた。これはダイダイ&ゆずマーマレードでやったのだけど、その仕上がりがやたら透明度が高かったので。

 

f:id:uncountable:20220607203636j:image

 

刻んだ果皮を1時間茹でて、果皮だけを引き上げ、ペクチン液はそのまま煮詰める。

 

f:id:uncountable:20220607203857j:image

 

と、当初の糖度を測ってみたところ、約5度。多少は糖が含まれてるだろうけど、舐めると甘みはまったく感じない。ためしに糖度5のショ糖溶液を作ってみると、けっこう甘い。やっぱり糖以外のなんかを糖度として測っているのである。

ペクチン液はできるだけ濃く煮詰めてみる。煮詰めていくとトロみが強くなるので、ヘラでかいたときに鍋底が見えるくらいまで。それ以上やると焦げそうだし。このときの糖度は10まで上がってた。よしよし、ちゃんと濃縮されてるな。

このあとの工程ではできるだけ煮詰めない所存なので、グラニュー糖は多めに全重量の80%を量る。ペクチン液に果皮を入れて火にかけ、煮立つごとに果汁とグラニュー糖を3分の1ずついれていく。すると、ほとんど煮詰める時間を取らずに糖度が60を超えたので、もうできあがり。

 

f:id:uncountable:20220607204118j:image

 

これまでのレシピに比べたら加熱時間は断然短い。ただ、ペクチン液をかなり煮詰めているので、そこで風味に悪影響があったりしないか。まあ、食べてみての味次第。

 

瓶詰めして一晩冷ましたら、ゼリーがわりとゆるい。リンクルテストもして問題ないと思ったのに!

とか言ってたら、もう1日おいたらきれいに固まった。そういうことはたまにあるのだけど、どういう理屈なんだろう?ペクチンが固まるのは細長いペクチン分子どうしが架橋されるかららしいけど、その反応がゆっくり進むから?あるいは、今回は仕上げ時に果皮を煮る時間が短いので、まだ果皮中にペクチン成分が残っていて、瓶詰めしたあとも滲み出しだりするんだろうか。粘度を考えると自然に分散するとも思えないけど。

まあ、とにかくきれいに固まったのだからヨシ。ペクチン液の煮詰め方として、今回程度で問題ないという結論に。

ただし、材料によって成分が違ったりする可能性はあるので、都度テストしてみる必要はあるとおもう。まあ、普通そういうもんだよね。

 

f:id:uncountable:20220607203707j:image

 

さて味見。うんうん、かなり良い。

糖度は高めだと思うけど、しつこさ、キツさはまったく無いし、風味も良い。方向性は良さそう。このレシピをもう少し研究していきたい。

透明感はまあまあかなあ。煮てるときから少しクズが出る感じはあったので、ダイダイ&ゆずのときのような美しさはない。刻み方を少し薄くしすぎたか。

ちょっとミスったのは、レモンの果皮が固い。レモンだけもっと長めに茹でるべきだった。最初から混ぜちゃったので分けようがなかったんだよね…かといってレモンに合わせてぜんぶを長時間茹でると、レモン以外が崩れてしまうなど支障がありそうだったし。しかしどちらかというと、果皮が固い方がマーマレード的にはよろしくない気がする。食感が、固いだけじゃなく、口の中に残るんだよね。あれは良くない。