煮るよ。

#煮るよ

2022-02-17 ダイダイ&グレープフルーツ&レモンマーマレード

個人的に推したいレパートリー。スコーンに合う。むしろスコーンに合うようにデザインしてある。というか、スコーンにめちゃくちゃ合うダルメインの「ジェーンズマーマレード」の真似をして作ってるのだけど、本家で使われているセビルオレンジは日本国内ではなかなか手に入らないため、どうやら近縁らしいダイダイで代用してる、というレシピ。
昨年はじめて作ってみてなかなか良くできて、目指したジェーンズマーマレードにも雰囲気が近いような気がするし(直接比較したわけじゃないからよくわからないけど、スコーンには合う)、マーマレードアワード日本大会では銀賞をもらえたし、調子にのって今年もやります。

ダイダイはその辺の店頭ではほとんど見かけないのでお取り寄せ。グレープフルーツも、皮を使うのでできれば国産で、となるとやっぱりお取り寄せ。どちらも和歌山県産。
ダイダイはポン酢用として使われるらしく、果汁の酸味はとても強い。ただ、果皮が分厚いので果汁の量としては少なめで、そこを補うのがグレープフルーツである。また、ダイダイ特有のクセも、グレープフルーツの香りがいい感じにまとめてくれる。ダルメインの真似なので私が考えたわけじゃないけど、なるほどよく設計されている。

作り方は夏みかんと基本的に変わらない。
ただし、英国クラシックな雰囲気にしたいので(偏見かもしれないが)、果皮の刻みを厚めにする。夏みかんでは2mm程度だったところ、3〜4mmといった感じ。数字だけ見ると大差ないが、見た目も食感もかなり変わる。まあ、本家のジェーンズマーマレードでは5〜6mmあったような記憶があるので、これでもだいぶ日和ってる。

夏みかんと同じで、昨年は茹でてからカットしてたけど、今年は生カットでやってみる。生カットのほうが茹で時間が短縮できてラクな気がしてきたので。

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果汁を搾ってワタを外して刻んだら、4倍くらいの水を鍋に沸かして、刻んだ果皮を投入する。柑橘を混ぜる場合は食感を揃えるためにそれぞれ分けて茹でたりもするが、今回の3種は皮の固さや厚みも大きく変わらないので気にせず全部まとめて茹でる。なお、個数比はダイダイ2個、グレープフルーツ1個、レモン1個。
ワタ、種、刻んだ果皮のあまりなんかを別の鍋に入れて煮出し、濾した煮汁を果皮を茹でる鍋に加える。タイミングは適当だけど、最初の茹で汁が半分煮詰まったくらいで、ワタの煮出し汁を加える感じ。
最終的に果皮の茹で汁が当初の3分の1程度になったら火を止めて、計量。グラニュー糖は80%として半分を混ぜて半日放置。
砂糖と果汁を加えながら糖度が上がるまで煮詰めてできあがり。

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できあがりだけど、ちょっと煮詰めすぎ、固すぎな感じで、気泡も入ってしまった。前回の夏みかんよりは煮詰めてないと思うけど、ペクチンが多かったのだろうか。というかやはりペクチン量と糖度とpHのバランスってことだよなあ。しかしペクチン量に関してはなかなか定量的に測定できないのが難しい。結局はリンクルテスト(冷蔵庫で冷やした小皿に少量取って、スプーンなどで寄せたときにシワが出たらオッケーなテスト)が最強ってことか。
次回はもう少しゆるめを狙いつつ、果皮を厚めに刻むのでもっと柔らかくする方策を検討したい。





2022-02-16 夏みかんマーマレード

夏みかんマーマレードにはそれなりに自信があったのだけど、今シーズンはここまで2回連続でゼリーがあまり固まらないという、やや不満な出来となった。

味は良い。しかし「良いマーマレード」という美意識にもとづいて、ゼリーをなんとか固めたい。

 

マーマレードのゼリーを固めるのは、成分としてはペクチンである。

ペクチンは植物の細胞壁中に含まれ、言ってみれば野菜や果物の「硬さ」のもと。しかし、ペクチンというのは「ペクチン」という決まった分子があるというよりは、ガラクツロン酸が重合したポリガラクツロン酸を主成分とする複合多糖類なので、その性質に幅がある。分子量の大小だったり、ガラクツロン酸中のカルボキシル基のメチルエステル化具合なんかによってもペクチンとしての性質が変化する。これが、野菜によって硬さが違う、あるいは果物が熟すと柔らかくなる、といったことの原因である。加工においては、種類はもちろん生育状況や熟度などによって、同じ工程でも応答が違うということになる。

みたいな話を、ペクチンをどうやって扱い、うまいことゼリーを固めるかについて考え調べてるうちに、ネットで見つかる程度ではあるけど論文で読んだりしていた。いちばん参考にしたのは↓

渕上倫子「 野菜・果実のペクチン質に関する調理科学的研究」(日本家政学会誌 2014, 65, 479-491)

この著者の方、「ペクチン」で検索すると必ず出てくるんですが、数十年にわたってペクチン関連の研究をされているようです。上の論文はそれまでの研究の総括的な内容となっているもので、はっきり言ってネットをいくら検索してもこれ以上の内容は出てこない。もちろん、レビュー論文として引用文献も多数挙がっているので、詳細も追える。

とりあえず気になる点としては、

 ① 加熱時のpHは4のときもっともペクチンの分解が少ない

 ② 70℃以下で加熱するとむしろペクチンが硬化する

なるほど…

①についてはなかなか適用が難しい。というのも、ペクチンの分解が少ない方がゼリーは固くなるかもしれないが、果皮も固くなってしまうのでは?という疑問が浮かぶ。また、以前の講習会で「酸性の方がペクチンの溶出が多い」と教わったこともあり、その辺りとの関連がちょっとよくわからない。また、ワタを外さないで茹で始める1回目のレシピでは多少果肉がのこるために茹で汁はやや酸性となるが、このときもゼリーは固くないので、効果のほどがあやしい。単にpHがそこまで低くなかったのかもしれないけど(測ってない)。

②は、水から茹でるとペクチンが硬化する温度域を通過するので沸騰したお湯に材料を投入したほうが柔らかくなるという、まあ煮物を作る時の知識なんですが、これは即採用。


ということで、①は今回具体的に取り入れることはしないが、頭に入れつつ工程を見つめ直してみる。②はそのとおりに、先に鍋でお湯を沸かしてそこに刻んだ果皮を入れて茹で始めることにする。これは「やってみて逆効果」ってこともなさそうだし、たとえ意味なくても手間は変わらないし。


他は基本的に前回と同じレシピとするが、果皮を茹でる際に茹で汁を強めに煮詰めて、ペクチン濃度を濃くしておく。具体的には、4倍の水で茹で始めて、4分の1になるまで煮詰めた。

また、砂糖ははじめから多めの80%を目安としておく。上記のとおり茹で汁を煮詰めて減らしているので、砂糖を加えた後の仕上げの煮詰め具合が少なくていいだろうという目算だ。


で、結果は、煮詰めすぎなのか、味が濃いというか、苦味が際立ってしまった。また、皮も固めに仕上がった。ゼリーはしっかり固まってる。

しかしこれ、工程の変更の効果なのか、単に糖度が高いからなのか、よくわからない。糖度あげれば固まるのであれば、その方が考え方はラクでだけど。ほんとうは工程をひとつ変えたらそれ以外を一切変えずに進めないと、効果の評価ができない。しかしなかなかね、時間も材料も限られていると思うと、焦っていろいろやってしまう。


あ、もうひとつ、今回変えたところがある。果皮の刻み方を、厚さは同じで少し短くしてみた。

瓶詰めの際、どうやら瓶の直径に対する果皮の長さでけっこう瓶の中でのバラけ具合が変わるようで、短くした方が果皮の向きがランダムな感じになる。長いと縦向きに揃ってしまい、まあそれが良いという意見もあるかもしれないけど、個人的にはランダムなほうが好みなので短めに修正して、これは狙い通り。

 

 

2022-02-13 夏みかんマーマレード

・もっと果皮を柔らかくしたい
・もっとゼリーを固くしたい
・もっと明るい橙色に仕上げたい
というわけで、とりあえず前回からの変更点として、果皮を生で刻むことにする。前回は4分の1カットかつワタがついたままの状態で果皮を茹で、柔らかくなったものを刻んだが、今回は果汁を搾ったらワタを取り除き、細かく刻んでから水で茹でる。
そもそも前回まで茹でてから刻んでたのは、講習会で教わったレシピだというのと、工程的にそのほうがカスが混ざりにくくてクリアに仕上がると思ってのことで、一昨年(かな?)から採用してる。ただ、クリアに仕上げることについては、いまならまた別の方策でなんとかできる気がする。
あと、レシピを変える以前、生で刻んでから煮てたときの方が、色も風味も明るかったような気がするんだよね…。関係あるかわからないし、まったくもってなんとなくの記憶でしかないのだけど。
とにかく、生で刻むレシピのほうがなんか上手くいきそうな感触があるので、やってみましょう。昨年マーマレードアワードで賞をいただいたレシピを変更することにはなるけど。

生の果皮を刻むときは、ナイフの刃先から伝わるサクサクという感触が心地よい。刻む工程はとにかく面倒というイメージだが、最近は夏みかん4個くらいならまったく苦にならない。大きさ、厚みを揃えることに集中して作業しているうちに終わる。強いて言えばもう少し高い作業台があるとラクかな。

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なお今回厚みは2mm程度。薄いほど食感としては柔らかくなるが、薄すぎると煮てるうちに崩れてしまい、見た目がよろしくない。

刻んだ果皮をたっぷりめの水で茹でる。細かく刻んでから茹でるほうが、柔らかくなるまでの茹で時間は短く済みそうなものだが、結果的には2時間ほど茹でた。外果皮部分は結局固さが残るので、ある程度時間をかける必要がある。
別の鍋で、果皮から外したワタと、果汁を濾したカス(種含む)を水で煮出す。茹で始めて1時間くらいの時点で、これを濾したペクチン液を、果皮を茹でる鍋に途中で加えた。けっこうトロトロの液体が取れる。

果皮を2時間ほど茹でて柔らかくなって、ついでに煮汁もいい感じに煮詰まってるのを確認したら、鍋の中身を全部計量。この時点で前回よりも色が明るい気がする。気のせいか?

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果汁も合わせた全重量の70%を目安に、その半分の砂糖を鍋に加えて煮立てて溶かして半日放置。
ここからは基本的に前回と同様。あんまり煮詰めないように、どちらかというと砂糖を追加していって糖度を上げて固さを期待する方針。
最終的に75%分の砂糖を入れて、糖度は63度でできあがり。

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色合いはあんまり変わらないかな…
瓶詰めすると明るく見えるけど、煮詰めてない分だけ皮の比率が少ないから、そう見えるだけかもしれない。

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まあ、悪くない。が、やっぱり、冷ましてもあんまり固まらない。前回と大差なし。
1〜2週間すると固まったりするからとりあえず放置してみるけど…
しかし去年は1日でカチッと固まってたよなあ。ペクチンもいちおう確認はしてるけど、もっと煮詰めるしかないのか?材料の性質の問題だろうか。

結局、レシピ変更の成果はよくわからない。色が改善したような気もする。前回に比べて加熱時間が多少は短いので、もしかしたらそこが影響してるのかもしれないけど、なかなか評価は難しい。
うーん、マーマレードなんもわからん。

あ、そういえば、茹でてから刻むほうが作業がラク、という話もあった。どちらかというとクラシックな製法で、やはりラクなほうが一般には広まったのかなとか想像している。
しかしこの点ついても、今となっては正直よくわからない。柔らかい方が切りやすいといえばそうなのだけど、生の方がハンドリングは良いし、包丁がきちんと研いであれば、そこまで大変ということでもない。今回久しぶりに生でカットしたけど、まったく支障なかった。
ちなみに包丁が切れない場合は表面のワックスで滑って切りにくいし危険。あるいは、子供と一緒に作るとかなら、茹でてから刻んだほうが安全かも。なんならハサミでも切れるし。


2022-02-11 夏みかんマーマレード

家の中が柑橘だらけで家族の視線も痛いので、とりあえず消費する。まずは、数もたくさんある実家産の夏みかん

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夏みかんマーマレードは昨年のマーマレードアワードでベストカテゴリー賞をいただいたやつなので、同じレシピで自信まんまんに取り組みたい!
といいつつ、ちょっと思うところが。以前に購入した夏みかんマーマレードに、皮がすごく柔らかくて食感も良く、どうすればこうなるのかと大変感動したものがあって、なんとかあれを目指したい。いかに果皮を柔らかく煮るかを今シーズンのテーマに掲げてレシピを調整することに。といっても、まず思いつくのは「皮を長めに茹でてみる」くらいですが。

昨年のレシピを参照すると、果汁を搾ったらワタを外さずにそのまま水で茹でて、ワタをスプーンで刮ぎ取ってから果皮を刻み、茹で汁を濾して刻んだ果皮と合わせて火にかけて、煮詰めながらグラニュー糖と果汁を加えて仕上げる。
そして今回目指したいのは、上述の柔らかい果皮と、ちょうど良いゼリー。まあ言うだけは簡単だけど、あまりはっきりした対策は無い。

とりあえず、皮を茹でる時間を、去年は2時間程度だったので、長めに3時間ほどにしてみた。

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茹で上がりをかじった感じでは、じゅうぶんに柔らかくはなっている。しかしまだ「ぷつっ」という食感が残り、それはそれで悪くないのだけど、あの「もちっ」とした食感には届かない。なにか秘密があるのかなあ、圧力鍋使うとか、あるいは単にもっと長時間、丸1日煮るとか?
まあ、昨年程度には柔らかいので良しとして、次の工程へ。

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ワタを取り除いた果皮を2mm厚に揃えて刻む。昨年からこの「茹でてから刻む」工程を採用してるのだけど、その理由のひとつが「刻むのがラクだから」。なんだけど、今となっては実際どうなのかよくわからない。柔らかくて切りやすいのは間違いないけど、生の果皮がそこまで刻みにくいかというと、包丁がきちんと研がれていれば大差ないと思う。まあ、改めて比較してみてもいいかもなあ。

茹で汁は目の細かいザルで濾す。濾した茹で汁と、刻んだ果皮と、果汁の重さの合計の60%のグラニュー糖をはかる。60%は少なめだけど、これはあとで茹で汁を煮詰めることを意識した量。

ここからまた昨年とは違う工程をひとつ。茹で汁と果皮を鍋に戻して火にかけ、砂糖の半量を溶かして煮立てたら、火を止めて、半日放置。
この「半日放置」が追加なのだけど、じつはこれ、もともと講習会で教わったレシピに入ってたのに、時間がかかるので省略してた工程。いまさら思い出したように入れたのは、これによって果皮に糖分が浸透して比重が均一になることで、瓶詰め時に果皮がきれいに分散するかなと。けっこう瓶詰めしたときに果皮が上に浮いてしまってかわいくない問題、特にゼリーが多いと顕著なので、せっかくきれいなゼリーに仕上がっても残念である。なんとかならないかと思案してたところ、講習会レシピを見直して思い当たった次第。
結論から言うと、これは良さそう。ゼリーと果皮のバランスにもよるので今の時点ではなんともいえないところはあるけど、まあ理屈がイケてるので当然なのだけど。
ただ、半日放置というのが生活のスケジュールに上手く乗せられるか問題は、ある。別に丸1日でも問題はないと思うけど。

実際、半日放置すると果皮の透明感が増してるのがわかる。あらためて火にかけ、まずは軽く煮詰めていく。
煮詰めすぎて糖度が高くなると果皮が固くなってしまうかもしれないので、温度をみながら適当なところで果汁と残りの砂糖を加えていく。これも一度に加えず、少しずつ、煮詰めながら。果汁を全て加えた時点で、砂糖が足りない(糖度が不足で温度が上がらない)ようであれば砂糖を追加する。今回103℃まで上がって、当初の60%予定に対して55%くらいしか砂糖が入らなかった。ただしこれは煮詰めた量が多かっただけなので、計量前にもっと煮詰めておけば70%だったかもしれず、単純に%では決められないので注意…。というか、今回は砂糖入れてから加熱する時間が長くなってしまい、これ下手するとカラメル臭みたいな風味が残ってしまうので、やっぱり砂糖加える前にもっと煮詰めたほうがいいですね。

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できあがり。味は悪くない。けど、
・果皮の固さは昨年と変わらない
・ゼリーがわりとゆるい
・色がちょっと赤い
つまり目標をいっこも達成できてない…。味は良いんですけどね。さてどうしたものか。



2022-01-08 レモン&キウイマーマレード

マーマレードには柑橘以外の材料を合わせて使う「ミックスマーマレード」というジャンルがある。というか、マーマレードアワードのカテゴリーのひとつである。

もちろん、なんでもかんでも混ぜて煮れば、何かしらのミックスマーマレードは出来る。そしてそれがけっこう美味かったりもする。しかし「材料を混ぜる」というのはジャム煮においてけっこう難しい作業なのである。単純に材料の種類だけ手間が増えるのもあるが、それ以上に考えるべきことが増える。

材料の割合だ。

たまたま家に余ってたこれとこれ混ぜちゃえ〜っ!というのは大いにアリで、そんなときは割合なんか成り行きで構わない。しかし、ひとたびこだわり出すと、奥が深いというか、めんどくさいというか、食感のバランスを取るための刻み方やらペクチン量や酸のバランスも気になるし、大きさもバラバラなので個数比は無意味だし、そもそも材料の果物の味が毎回違うし、これさえ守れば完璧な黄金比レシピ!」みたいなものが存在しないのである。だから、お店で売ってるジャムでミックスのやつは、何かしらのこだわりや試行錯誤が反映されており、たいていとても美味しい。少なくともその店の思想を物語ってくれるはずだ。

 

じゃあミックスのジャムの自作なんて、と諦めるのはまだ早い。ミックスのものを自作するうえで間違いないのは「どんな比率で作っても美味しいやつ」である。そして私が過去に作ったもので自信を持ってお勧めできるのが、「いちご&ブルーベリー」と「レモン&キウイ」。特にレモンキウイは普通あんまり食べたことないこともあってか、たいへんに評判が良い。

たいへんに評判が良いので私もたいへんに嬉しくなって調子に乗って毎年作ってるラインナップである。

 

レモン&キウイ、どんな作り方でも味は良いというチートなカップリングではあるが、いちおう4〜5年くらい作って安定したレシピになってきている。

ただ、名前と見た目だけを理由に昨年からグリーンレモンを使ってる。きれいな緑色のマーマレードが入った瓶に「グリーンレモン&グリーンキウイ」というグリーングリーンなラベルが貼ってあったら素敵じゃない?との思い付きだ。しかし、グリーンはきれいに色を残すのが難しく、またグリーンレモンの果皮の固さが課題であった。昨年の第3回マーマレードアワード日本大会では銅賞。

 

そして今年こそはとグリーンレモンをお取り寄せして、何回か試作したものの納得いかないまま時は経ち、グリーンレモンがほとんどきれいなイエローになってしまったのが今回。

 

ここまでの試作もバッチリ美味いのだけど、グリーンという点においては不十分という感覚だ。実際、グリーンレモンやその他の緑色柑橘のマーマレードや、なんならグリーンキウイのジャムでも、売っているものの中には着色料を使っているわけでもないのに鮮やかな緑が美しいものがある。そこにまったく届いていない。

それはそれ、でもいいのだけど、これ、今回もマーマレードアワードに出すつもりなので、その評価軸として「使う材料と見た目のイメージ」がとても大事になってくる。グリーンをきれいに仕上げることに技術が必要なことはジャム界隈の常識、つまりグリーンレモンとグリーンキウイを材料に選んだ時点で「これはグリーングリーンマーマレードです!このグリーンを見て!」と宣言しているに他ならない。もちろん目が肥えた審査員なので、「そんなに大口叩いてこの程度のグリーン具合?」と見られてしまっては評価につながるどころか逆効果だ。

 

というわけで、今年のマーマレードアワード出品用にはイエローのレモンとグリーンキウイのミックスマーマレードということにした。まあグリーンレモンがもう無いのでは仕方ない。

 

レモンは愛媛県今治産をお取り寄せ。キウイは近所の八百屋で買った長野県産。特に強いこだわりはないです。

 

レモンは切って果汁を搾って外果皮を茹でて刻む。グリーンだとやはり固い傾向にあるので刻んでから茹でるようにしていたが、黄色く熟したものなら大丈夫かな?と軽い気持ちで先に茹でてから刻んだ。ラクなので。

あとここで、思い付きで1個だけ余ってたライムも入れた。果汁を搾って、皮も一緒に茹でる。ただ、刻んだ皮は使わないことに。

 

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(2時間茹でて、半日置いた。)

 

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(カットは形をして揃えて2mm厚くらい)

 

キウイも刻む。少し固めだけど、キウイは完熟してしまうと甘すぎる感じになるので丁度よい。生食するには早い。

 

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キウイをレモンの茹で汁に入れて火にかけ、柔らかくなったらヘラで軽く潰す。好みで。

それから刻んだレモン果皮を入れるけど、レモン果皮入れてから決して潰さない。ピールの美しさが損なわれるので。

 

全重量の70%のグラニュー糖、今回は計算結果が998gと出たので一袋使った。ラクで良い。このグラニュー糖を3回に分けて溶かしながら加える。しかし流石に多くないか。

煮立てて温度測ってじゅうぶん煮詰まってるのを確認したら、最初に搾っておいたレモンとライムの果汁を加えて5分ほど煮詰めて出来上がり。なんか今回えらいスムーズだったな。なんでだろう…。

 

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これはこれで見た目かわいいのだから良いのである。

 

そして味が良い。

ライムが微量ながらいい仕事してる。

 

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2021-12-03 ゆず&ライムマーマレード

ゆずは柑橘の中でも枝の棘が長く鋭いので、果実が傷つきやすい。

だから、大きくて立派で、しかも見た目がきれいなゆずは、それなりに手間をかけて育てられ収穫されているはず。その辺の家の庭の木にたくさんぶら下がってることも多いから、1個100円とかで買うのにはなんとなく逡巡してしまうが、相応の対価である。もっと言えば、柑橘は変異が多様なので、同じゆずでも「この農園のゆずは香りが濃い」「この木は果汁が多い」みたいなこともあるし、それをブランド化して販売している場合もある。

しかしそこまで考えだすとキリがないので、私の対ゆずスタンスとしては「そのとき手に入ったものを煮る」である。ゆずそのものへのこだわりは持たないようにしている。

 

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「ご近所でとれたゆずをたくさんいただいた」というご近所さんから連絡をいただき、お裾分けを頂戴した。傷のついたものが多く、サイズもバラバラだが、自家用に煮るならじゅうぶん使える。

ゆずはマーマレードの材料として、安い、美味い、簡単の3拍子がそろっており大変優秀。今回のようにタダで手に入ることもあるくらいありふれているし(時期は限られるけど)、ゆずをゆず足らしめる香りと風味は火にかけてもその鮮やかさを失わない。そしてなんといっても、外果皮の柔らかさとペクチンの豊富さが、マーマレード作りにおいて大きなアドバンテージとなっている。外果皮が柔らかいから茹でる時間が短いし、ペクチンが豊富だからきれいに固まる。
ゆずをいただく少し前に、第3回ダルメイン世界マーマレードアワード日本大会のイベントで、ダルメイン現当主によるマーマレード講座的なものがあり、そこでゆずを扱っていた。当主のジェーン・ヘーゼル・マコッシュ氏はオンラインで解説しながら、会場で日本のスタッフがジャム製作するというスタイルだったが、印象的だったのはジェーンのゆずへの愛である。どうやら、ゆずは、英国では手に入らない。ゆずの香りは英国マーマレーディストの憧れなのである。日本でセビルオレンジが手に入らないようなもんか。
で、その時のレシピがゆずマーマレードとしても超簡単レシピで、せっかくなのでまず準拠して作ってみた。
 

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まあ、簡単といっても「外果皮を茹でて細かく刻む」という工程はあるので、マーマレードではない簡単ジャム(ブルーベリーとか、ルバーブとか、ザクザク切って煮るだけ)に比べれば手間はある。しかしまあ、「茹でて刻む」工程は難しくはない作業だけだし、なんなら刻むのはハサミでもいける(ジェーンも「ハーブ用ハサミ(5枚刃のハサミ)使こたらめっちゃラクやで!」ゆうてはった)ので。
ただ、このレシピはワタの部分もすべて使っているので、無駄はないけど、クリアなジュレにはならない。

そこで、見た目を重視したレシピでもうひと鍋。
 

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こちらは、外果皮を茹でたあと、スプーンでワタをこそぎ取る、ペクチン液(茹で汁)は細かい目のザルで濾す、などしたもの。その他の部分は基本的に同じ。
ゆずはものや状態によって果汁が少ないので、pHが思ったより下がらないことがあって、その場合はレモン汁の添加など検討する必要もあるけど、今回は問題なし。
二つのレシピの出来上がりを比べてみると、瓶で見るレベルではあんまりわかりませんね…(スプーンで掬うとわかる、はず)。
 

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(左が1回目、右が2回目)
 
さて、まだゆずが残っているけどどうしよう?
また同じレシピで作るのも芸がないので、思い付きで、こちらも余っていたライムを合わせることに。思い付きといっても、ゆずとライムのマーマレードはオリジナルでもなんでもなく、商品としても見るラインナップ。
ただ、初めて作るし用意されたレシピがあるわけではないし、完成の味もイメージできていない。つまりビジョンがないのである。
 

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基本的なマーマレードの作り方で問題ないと思うが、おそらくひとつのポイントになるのが「ゆずとライムの食感のバランス」である。上述のようにゆずの皮は柔らかいので30分も茹でればじゅうぶんだが、一方のライムを同じ時間で済ませてしまうと、ライムだけが固い状態で残り、食感を損ねてしまう。オランジュルクラというメーカーの「ライム&ゆずマーマレード」、これがゆずマーマレードのベースの中にハートに抜いたライムの皮が入ってる超かわいいマーマレードで、しかしかわいいだけじゃなく形を変えて加えることで多少の食感の差異は気にならなくなるという設計なんだな…。しかし手間は絶望的だし、今回はそこまでできない。
そこで、まずライムだけカットして果汁を搾り、ワタをつけたままの外果皮を茹でる。しっかり柔らかくなるよう、長めに2時間茹で、さらに一晩寝かせる。まあ一晩寝かせるのは人間のほうですが。
 

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(ライムだけをカットして水で煮ること…)
 

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(…約2時間)
 
あとは、ゆず単独の時の2回目レシピとおなじ。ライムを刻む際は意識的に細め、小さめに。こちらも食感のバランスをとるため。
 

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砂糖を加えて煮詰め、さいごに搾っておいたライム果汁を加えて煮立てて出来上がり。
なんだけど、リンクルテストでも温度計でも終わりの判断が難しく、少し煮詰めすぎてしまった。結果としてやや甘味が強い、やや固すぎる仕上がりに。なしではない範囲だけど。色合いとして若干暗い色になったのも煮詰めすぎか、あるいはライムの緑色のせいだろうか。
 

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という反省点はあるものの、しかし味がめちゃくちゃ良い!
ゆず単独ももちろんうまいのだけど、奥行きがグッと広がる。これはレシピをブラッシュアップしてレパートリーにいれたいやつ。
 

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ライムが良い香りなのは知ってたけど、脇役でマーマレードに入れて風味に奥行きをだす用途にめちゃくちゃ使えるな…。オランジュルクラの「夏みかんマーマレード」にもライム果汁が入ってたりする。ペクチンも多いらしい。
来年はライムをもう少し多めに注文しようかな。
 

2021-11-08 ライム&ラフランスマーマレード

柑橘以外の材料を合わせて使うミックスマーマレードのラインナップの中でも、個人的に気に入っていて研究を重ねているレシピ。

ラフランスだけのジャムも、それはそれで美味しいのだけど、すこし甘すぎる仕上がりになりがち。酸味を加えるのにレモンを搾ると、レモンの香りがラフランスの風味を損なってしまい、妙な臭みだけが目立ってしまう。と、わたしとしては思っていて、そこで思いついたのがライム。

 

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ライムの香りであれば、ラフランスの風味を覆い隠さずに、深みを演出してくれる、気がする。

何より、「ライム&ラフランス」の響きがオシャレじゃないですか。じつのところ、洋梨でもバートレットなんかを使ったほうが仕上がりが白くてきれいなんだが(ラフランスは果肉の色が黄色っぽい)、やはり名前の響きには代えられないのである。

 

昨年のマーマレードアワードでは銅賞。方向性は良いし味も悪くなかったけど、なんとなく全体のまとまりが悪かったのは否めない。あと、ライム果皮が崩れてしまい美しくなかったのは、大きな減点要因であった。

果皮が崩れるのは、基本的にはカットが薄すぎて、それを混ぜたりしているうちに崩れてしまうから。しかしグリーンのライムの外果皮は固いので、厚めのカットではラフランスとの食感のバランスが取れない。方針としては、できるだけ柔らかく茹でて、崩れない程度にできるだけ薄くカットして、鍋に入れてからはできるだけ触れないように仕上げる、といったところか。

何度か試作してわかったのは、ラフランス自体はペクチンが少ないので、ある程度ライムの比率を多くしないと固まらないし、その方がマーマレードとしての見た目も良い。しかしライム比率が多くなれば食感や見た目の影響も大きくなるので、注意する必要がある。

 

まずはライムを切って果汁を搾り、そのまま水で煮ること2時間。さらに半日おく。

 

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ワタをスプーンで刮ぎ取る。このとききちんと取らないとやっぱり見た目に影響するので、勿体ながらずにゴリゴリ取ったほうがいいし、なんならクズが残らないように水洗いする。

カットは大きさを揃えて「潰さない程度に薄く」。ナイフをよく研いでおくのが大事だったりする。

 

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ここでラフランス。

 

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ラフランスは切ったそばから変色していくので、カットはすみやかに。わたしは切ったそばから切り口をライム果汁に漬けて酸化を防止。表面積を少なくするためにこの段階ではくし切り程度の大きめにしておいて、煮るときに潰すことにする。

ラフランスは生食するならしっかり柔らかくなるまで追熟が必要だけど、煮るなら少し固めのほうが扱いやすい。完熟の方が香りは良いので混ぜてもいいかもしれない。

 

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ライムの茹で汁をザルで濾して、そこにラフランスを投入して火にかけ、柔らかくなってきたらマッシャーで良い感じに潰す。

ライム果皮を入れて、全重量の70%の砂糖を入れて煮詰めて、最後にライム果汁を加えて煮立ててできあがり。

 

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風味づけに白ワインか、酒ならジンとか入れても合うかもな〜と思ってたんだけど、完全に忘れました。来年やろう。

 

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それでも味は良い!見た目も、良いのでは?