煮るよ。

#煮るよ

2022-03-19 いちご&ブルーベリージャム

この日のために、昨夏に買ったブルーベリーを冷凍しておいたのである。

それなりに冷凍庫の容量を占拠しており不便を強いられたが、ひとたびこのミックスベリージャムを口にすれば、そんなことは忘れてしまう、そういう(?)美味さ。

いや、ほんとに。

いちご&ブルーベリージャムは、どんな比率でどんな作り方しても絶対美味いかつ簡単。唯一の難点が「同時に手に入りにくい」なんである。なので冷凍。いちごを冷凍した方が保存期間が少なくて済む気もするが、いちごは嵩張るからなあ。

 

何も考えないで雑に作っても全然いいのだが、いつもこのジャムを作るときに気になっている「いちごの存在感を前面に押し出したい」について考えながら煮ていく。いちご&ブルーベリーと言うわりに、ブルーベリーの圧倒的アントシアニンにより仕上がりは真っ黒になり、味はともかく、かわいさが足りないのだ。いちごは可愛くなければならないので。個人の感想ですが。

とりあえず食感の存在感を残すために、いちごは半量だけ潰して、残りは半割りのまま形を残すことにする。いちごは栃木県産とちおとめ。ちょっと傷んでしまってすみません。手作りジャムのよくある誤解の一つに「傷んだ果物、不味い果物でもジャムにすると美味い」と言うのがあるけど、残念ながら、新鮮で美味しい果物を使った方が美味しいジャムができる。傷んだ果物、不味い果物を捨てるのはもったいないので緊急避難的にジャムにして美味しくいただくのはアリだと思うけど、それはそういう風味にはなってしまう。美味しいジャムが食べたければ新鮮で美味しい果物をジャムのために買いましょう。

今回使ったいちごの比率は生重量で69%だけど、これは単に買ったいちごの量と冷凍してあったブルーベリーの量の成り行きです。まあ、半々よりブルーベリー少なめの方がバランス良いような気はする。しかし色に関しては、このくらいの比率だとまだ真っ黒になる。

ラニュー糖は70%を加えて、長時間浸漬などはせず、木べらでガシガシ混ぜて水分を出す。このタイミングでいちごの半量をマッシャーで潰す。ブルーベリーは生ではあんまり水分出てこないので、そのまま砂糖と一緒に鍋へ。

 

いちごとブルーベリーを鍋で混ぜたところ。

 

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この瞬間が一番エロい。願わくばこの雰囲気を残したいんであるが、まあ無理ですね。それぞれ煮てから混ぜるとか、先にいちごジャム作ってそこにブルーベリーを投入して煮立てるだけ、とかにすれば少しは良いのかもしれないけど、それではミックスする意味は?となってしまう。風味が交わることに意味があるので。

 

あとは、火にかけて煮詰めるだけ。えっ、マーマレードじゃないジャムって簡単ですね!

 

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できあがり。

 

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いちご入ってる感はあるけど、時間が経つと色が馴染んでいちご果肉ももっと黒くなるし、そもそもこの瓶いちごが入って見えるように配置したので。まあ、いちごの可愛さを主張するならそのくらいのことはやっても良い気がする。

 

味はやっぱり良いなあ。今回は入れてないけど、キルシュや赤ワインを入れて煮立てても良いと思う。さらに風味に奥行きが出る。なお今回入れなかったのは何かのこだわりではなく、いや、恥ずかしながら、キルシュやワインを常備してないんですよね。買ってくれば良いのだけど、思いつきで煮はじめてしまうので…

 

そしてこんなに美味しいのに、冷凍ブルーベリーの量が決まってしまってるから、もうこれ以上作れない。子供にもめっちゃ人気なので、すぐ無くなっちゃう。

あ、ブルーベリージャムを瓶でとっておいて、それをいちごジャム作った鍋に混ぜれば良いのかなあ。それなら冷凍庫は使わないし。ブルーベリージャムも人気なので、それはそれで早々に無くなってしまうという問題は依然として存在するが。

 

2022-03-11 ダイダイ&ゆずマーマレード

ヒマラヤあたりが原産の柑橘で、東に進んで中国経由で日本に渡ったのがダイダイ、西方へ伝わったものはビターオレンジと呼ばれる。英国のクラシックなマーマレードの主役たるセビルオレンジがビターオレンジの一種であり、つまりダイダイとセビルオレンジは系統的に近縁。それならなんとなく雰囲気的に似てるかなーと思い、実際に作るとなんとなく仕上がりの雰囲気が似てるので気に入って、ここのとこ毎年ダイダイをお取り寄せしてマーマレードを作ってる。

ただ、もっとも一般的なダイダイの使用法は、鮮やかな色を愛でる鏡餅の飾りと、酸味の強い果汁を利用したポン酢。果皮を使うマーマレードにするとけっこうクセがあるので、グレープフルーツやレモンなんかを混ぜると良い具合に風味がまとまるのだけど、ならば同じように和風の雰囲気を纏うゆずの香りをぶつけたらどうなるだろうか。まあ「ゆずポン酢」も普通にあるのだし、イケるやろ。

 

で、前回の「グレフル&夏みかん&レモン」ように思いつきの組み合わせで上手くいくこともあるが、まあ、事はそう簡単ではなかった。

 

出来上がりを舐めると、ダイダイとゆずが、だいぶケンカしてますね…香りが良いといえば良いのだけど。ゆずの量を抑えつつ、何か…例えばリキュールなどで風味をまとめる必要がありそう。マーマレードでリキュールを使うレシピは多くて、普通はコアントローグランマニエなんかを仕上げに少量入れるのだけど、わたしはなんとなく避けてきた。それは「果実の風味100%」というところとズレてしまう印象からなんだけど、今回のようなこともあって、最近は積極的に使いたい気分になってる。ミックスで作るマーマレードであればそこまで抵抗ないし、全く残念なことにリキュール入れると実際に風味の奥行きが違うんである。

 

ところで、今回ダイダイゆずを煮るにあたって、↓の記事で言及した「それぞれの柑橘でカットを変える」を加工技術としてちゃんとやってみました。

 

niruyo.hatenablog.com

 

まず、ダイダイは果皮が分厚く、ゆずは薄い。見た目と食感を揃えるために、ダイダイにひと手間加える。薄いものを厚くはできないので、厚いものを薄い方に合わせにいく。

ゆずはシンプルに刻むが、ダイダイは内果皮1mmほど残して削ぐ。いつもは屑が出ないようにスプーンで削り取るだけなんだけど、今回はナイフでがっつり削ぐ。これは、最初からこういう指示のレシピも結構あって、確かにこのほうがきれいに仕上げやすいかもしれない。個人的には内果皮の白い部分が残る方が、見た目が好きなんだけど。とにかく今回はゆず果皮との相性を考えて薄く細くする。

こんな↓感じで(右から順に)切っていくとやりやすかったですね。

 

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それから茹で時間も、ゆず果皮はダイダイに比べるとかなり柔らかいので、ダイダイを茹で始めて、30分くらい経ったところでゆずを加えて合わせてさらに30分茹でる。

ペクチンはじゅうぶん量があったので、グラニュー糖を70%加えてから目標の糖度まで煮詰めて、ゼリーはきれいに固まった。ダイダイもゆずも果汁が少なめなので、pHが下がらない心配をしていたが、果汁の酸性自体が強いのか、こちらも問題なし。

まあ、この辺の工程に関しては何の問題もなく、というかむしろここ最近の経験がじゅうぶんに活かされて大変に上手くいきました。

 

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が、如何せん仕上がりが上記の通りでございまして。

 

 

2022-03-07 グレープフルーツ&夏みかん&レモンマーマレード

手元の柑橘の中で思い付きのマーマレードを作る。

夏みかんマーマレードとダイダイ&グレフル&レモンマーマレードは恒例のラインナップとして作ってるのだけど、仕入れた材料全部使い切るまで同じものを作るのも芸がないなと。

あと、↓の記事でその筋には「スリー・フルーツ・マーマレード」というジャンル(?)があることを知り、俄然モチベーションが上がった。

ukwalker.jp

 

とりあえず間違い無さそうな組み合わせの、グレープフルーツ&夏みかん&レモンでやってみる。夏みかんがもっと爽やか寄りになる感じを想定。上手くいったらこれもマーマレードアワードに送ります。

 

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しかしまあ、レシピとしては2周まわって安定した夏みかんやダイダイ〜と基本的に同じ。カットはどうしようかな、というところで、今回はできるだけ薄くして繊細さを演出することに。特に意味を込めるわけではなく、身も蓋もない話、繊細に切り揃えられたピールはマーマレードアワードで審査員ウケが良いです。これはこれで、ウケ狙いがどのように評価されるのか煽りにいくスタイル。何様なのか。

できるだけ薄くって言っても、1mmを目指して1.5mmくらいになる感じ。いや、それでも3mmにするより手数が倍になるわけで、それなりに面倒ではある。あと、ナイフをよく研いでおかないと薄切りはしんどい。それは『森のほとりでジャムを煮る』(小鳩子鈴)でマーガレットも言ってた。

 

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4倍くらいの水、というか沸騰したお湯から茹ではじめる。薄いから30分くらいで柔らかくなるかな?と思ったけど、中果皮部分は柔らかくなったものの、外果皮は歯応えが残る…。1時間、1時間半、と様子を見て、結局2時間茹でました。

 

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えっ、2時間って、ここまで薄切りにしても丸ごと茹でる時間と大差ないのか?つまり外果皮が柔らかくなるまでの時間に厚みはあまり関係なくて、となると薄くすればするほど煮崩れてしまうリスクが上がるだけ?

もちろん同じ固さでも厚みが違えば食感が変わるので、そこはデザイン次第ではある。そういう意味でも「繊細さの演出」はあながちふざけたレシピでもない。

 

ラニュー糖は60%からスタートして煮詰め、果皮の割合が多くなりそうだったので5%分を追加。レモンもあるし、おそらくペクチン濃度は心配ない。

 

ということでできあがり。

 

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たしかに、透明感があって繊細!見た目はなかなか良いと思う。ゼリーもきっちり固まってる。

そして思った通りの爽やかさ。グレープフルーツの香りが支配的だが、夏みかんがまろやかさをプラスして奥行きが出ている。

ピールはやっぱり少し固いかな…薄切りだから食感としてはナシではないか。

皮の仕上がりの固さも今シーズンここまでいろいろ試行錯誤したけど、具体的に「こうすると良い!」という方策は見つかってない(理屈ベースで「熱湯から茹でる」とかはやってるけど、効果の評価はできてない)。結局、時間かけるか圧力かけるかくらいしかないのかなあ。

 

【参考】

 

2022-03-05 ダイダイ&グレープフルーツ&レモンマーマレード

「良いマーマレードにはストーリーを感じる」

とは、前回マーマレードアワードの表彰式に合わせて行われた講演会での、とある審査員の方のひとこと。正直なところ「それはあなたの感想ですよね」感が拭えない。というのが当初の印象だった。

で、それはそれとして、表彰式当日は「マーマレードフェスティバル」としてプロの受賞作品や本家英国マーマレードアワードの受賞作品の販売をしていたので、たくさん買い込んできた。それを帰宅後スコーン焼いてつけて食べたりすると、当たり前ながら美味い。美しく、香りは鮮烈であり、超美味い。

そうして「良いマーマレード」に触れてみると、「ストーリー」の意味するところが完全にわかってしまうのだ。

マーマレードの評価ポイントは主に、質感、色、香り、味といったところだけど、良いマーマレードでは、目で見てそして口に含んだときに、そのすべてについて「意識されたもの」を拾い上げることができる。「設計思想」と言うこともできるし、それがまさに作った本人の辿ったストーリーなのである。

最もわかりやすいのは、果皮の刻み方だ。カットが美しい果皮というのは、意識的に美しくカットしないと、他人が見て「果皮のカットが美しい」とは感じないんである。意識的に美しくカットしないことには、実際に美しくならないので。具体的には果皮の幅や長さや厚みといった寸法の均一さや、それが瓶の中でバランスよく分散するかなどについて、思考と試行を繰り返した結果すなわちストーリーが、目に見えることになる。

そして、評価するほうからすると、それを知ってしまっているがために、そこにストーリーを見出してしまう。果皮をごく薄切りにするのは非常に手間がかかるのでどう考えても意識的なものだし、かと言って厚みがあるもののキチンと切り揃えられていれば、そこには意図があるはずである。厚みも長さもバラバラなら、そこには意識が向いていないのだな、と判断せざるを得ない。(他の項目で超高評価なら「あえての素朴さの表現」として拾ってくれるかもしれないが、高等テクニックがすぎる。)

じつは、過去のマーマレードアワードにおける審査員講評(マーマレードアワードでは全作品に講評をもらえる)にも果皮の刻み方に関することが書かれており、しかもそれがまさに自分で意識したことを評価してくれる内容だったので「わかってんじゃん!」とニヤついていた。その当時は「ていうか、よくわかるな…?」と感心するのみだったのだが、いま思うとそれは「わかるもの」なんである。わたしがナイフを介して果皮に込めた想いは、伝わるのだ。


とはいえ限度はあるだろう。ならばどこまで伝わるのか。

今回ダイダイ&グレフル&レモンマーマレードを作るにあたって、わたしの思いつく限りのこだわり、すなわち「それぞれの柑橘のキャラクターをカットで表現する」ことにした。外野で聞くとちょっと何言ってるのかわかんない感じかもしれない。

ただ、「それぞれの柑橘でカットを変える」ということ自体は、加工技術として必要でもある。複数の柑橘をミックスするとなると、当然それぞれの柑橘で性質が異なり、特に果皮の固さが異なるときに全て同じように処理してしまうと、仕上がりとして食感にバラつきが出ることになる。そこで、この柑橘は皮が固いので薄く刻む、こちらは崩れやすいので茹で時間を短めに、などの配慮をして、完成時のバランスを取る。もちろんそれには何度も試作を積み上げてベストな工程を導かなくてはならず、やっぱりそこにはストーリーが生まれるって話。

とかなんとか言っておいて、今回の「こだわり」はちょっとそれとは別次元というか、ここまでの試作で茹で方は共通で良さそうなので(前回レモンを薄くしたら崩れたがあれは長時間茹ですぎたせい)、こだわるのは見た目だけの問題である。

キャラクター、つまりダイダイはダイダイの、グレープフルーツはグレープフルーツの、レモンはレモンの持っている性質、またそれぞれの違いを、カットで表そうというのである。意味わかんないかもしれないが。

いや、これはこれで真っ当な理由はある。マーマレードの質感の評価において「使っている材料の存在がわかる」という点もチェックされるため、3種類の柑橘を使っているなら3種類がきちんと区別されて目視できることは、高ポイントに繋がる、たぶん。というか、それが伝わるかどうかという挑戦なわけですよ。

まあ、別にコンテストのポイント狙いだけではなく、単にそれがかわいいから、というのが一番です。


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ということで実際に刻んでいきましょうねー。


実の大きさはグレープフルーツ、ダイダイ、レモンの順だから、これはカットの長さで表して、グレープフルーツは長め〜レモンは短めにカット。

ダイダイはやはり果皮の厚みが特徴的だから、内果皮の白い部分は削りすぎずに、厚みを活かして幅広に。

レモンの苦味の強い果皮やその鮮烈な酸味と香りは、やや薄めにカットすることでシャープさを演出する。


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おわかりいただけただろうか?


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ほら!やっぱりかわいい!

ついてきて!

ほら!!


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あっ、そういえばレシピですが、前回夏みかんの2年前レシピに準拠。

ただし、グラニュー糖60%から煮詰めはじめたら果皮の割合が高くなりすぎる感じだったので途中でプラス10%分を追加。こちらは夏みかんに比べるとペクチンが多かったのでグラニュー糖追加しても問題なく、上の写真見てわかる通りかなりいい感じに固まりましたとさ。


2022-03-01 夏みかんマーマレード

もう失敗は許されない。

なぜなら実家で収穫した夏みかんはこれで最後だから。


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まあ、まだ木に残ってるので必要ならまた収穫すればいいのだけど。


今シーズンの夏みかんマーマレード、ここまでレシピを迷いまくった挙句に行き詰まった感がある。

もはや何も考えない方が良いのでは?とも思ったが、無策すぎるのも癪である。

昨年は上手くいった。それは材料が違った(実家の夏みかんではなくお取り寄せだった)から、という可能性もあるが、しかし一昨年も上手くいったし、それは実家産だったのだ。

そこで、ここは初心にかえるべく、当時のレシピを見直してみた。

https://note.com/uncountable/n/n84c83b38dd7c

これこれ。レシピ…というにはアレですが、自分では読めばわかる。もう、これでいこう。2周くらい回り道して2年前のレシピに戻るとは、いったい何をしてたんだ。


2年前のレシピ、早い話が、砂糖を60%で決めてしまったうえで欲しい糖度まで煮詰める、というもの。これ、ここまでの紆余曲折を経験した感覚では、正直なところ、上手くいく気がする。

「一定の砂糖を加えて」「一定の糖度まで煮詰める」というと、糖度の話しかしていないようだが、実はキモとなってるのはペクチン濃度である。一定の糖度まで煮詰めるためには、当初加える砂糖が少なければ強く煮詰めるし、砂糖を増やせは煮詰め方は軽くなる。このとき、当然ながら、ペクチン濃度も煮詰め方に追従する。結果的に、加える砂糖を減らせば、ペクチン濃度は上がることになる。考えれば当たり前なんだけど、この概念はなかなか気づきにくい…。

このところ砂糖を増やし気味にしており、70〜80%くらい加えていたので、これを60%に減らした上で糖度が上がるまで煮詰めれば、じゅうぶんなペクチン濃度になると予想される。ゼリーもしっかり固まるはずだ。


ということで、他の部分は特に変更せず、砂糖の量を60%として(茹でた果皮、茹で汁、果汁の合計に対して)、糖度が目標の値に上がるまで煮詰めた。ちなみにだいたい63くらいで、温度を測ると103.5℃とかになる感じ。

できあがり…なのか…?わからん…


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瓶詰め後、一晩冷ましておそるおそる確認。


バッッッチリ固まってる!!

なぜ!もっと早く気づけなかったのか!!


いやでも待てよ、長く煮詰めたということは、それだけ風味を犠牲にしてる可能性もあるわけで、これまでのものと比較してみる必要はあるのでは。ゼリーの固さのために風味が犠牲になるなら、どこかに妥協点を見つけなければならない。

と思って、今シーズンここまでの夏みかんマーマレードを全部テイスティングすべく、ひとりマーマレードアワードを開催した。


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で、まあ文句なしで今回のがいちばん美味しいですね。

ゼリーが良いのはもちろんのこと、なぜか風味もいちばん良い。なんでだろう。砂糖を入れすぎると果実本来の風味を阻害するとかそういうことだろうか。単に煮詰めてるから果実の風味が濃いんだろうか。


マーマレードなんもわからん。


2022-02-26 夏みかんマーマレード

ペクチンを加熱する際の挙動として、pH4で最も分解しない、というのは以前書いた。それより低いと加水分解、高いとβ乖離による分解が進む、らしい。

ペクチンは分解してくれないと果皮が柔らかくならない気もするが(果実の「固さ」を作ってるのは主にペクチンなので)、もしかすると、茹で汁中のペクチンがあまり分解するのもゼリーが固まらない一因なのかもしれない。

前回は考えるのが面倒で工程に取り入れるのを見送ったが、今回はこの点をきちんと検証しておきたい。ペクチン量が多ければそんな心配しなくても良いが、ここまで夏みかんを煮ている感じからすると、そんな心配もしたくなるペクチン量のようなので。


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具体的には、刻んだ果皮の3倍の水に果汁を足してpHを4程度に調整し、火にかけて沸いたところに果皮を投入する。ワタは別の鍋に煮出して、煮汁を後で加える。回りくどいなあー。

pHは水素イオン濃度の指標なので、煮詰めると水素イオンも煮詰まって即ちpHも下がる。これを避けるため、極力煮詰まらないように蓋をして茹で、水が減るようなら都度足す。

どうやら果皮を加えて茹でるとpHが上がるようなので、果汁を追加して調整。

といった、まあ手のかかることをして1時間茹でたが、果皮がまだちょっと固い。以前は1時間程度で柔らかくなったと思ったけど…やっぱりpH4効果だろうか。伊達じゃねえな。

そこからはワタの煮汁も加えて煮詰めながら、合計で2時間まで茹でた。まあ固さとしては及第点。時間のわりには固いと思う。アルコールでテストする限り、茹で汁のペクチンはおそらく十分。


その後は以前と同様に、グラニュー糖と果汁を順次加えて糖度が上がるまで煮詰める。結果的に加えたグラニュー糖は75%となった。

しかし、さんざん理屈を捏ねた割には、あまり良い感触はない。なんか、根本的に考え方を誤っている気すらしてきた。


という予感は的中して、やっぱりきれいに固まらない。瓶の見た目はいいんだけどねー。


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もう、何も考えずに勢いで煮た方がうまくいくのでは。


2022-02-19 ダイダイ&グレープフルーツ&レモンマーマレード

とりあえず果皮を長時間茹でてみよう。もっと柔らかくなるかもしれない。

なんとも単純すぎる思考ではあるが、当たり前ながら効果も期待できる。ただ、そこまで長く茹でるレシピというのは見たことがないので、2時間以上はあまり意味がないとか、あるいはあまり長すぎると風味が悪くなるとか、何か理由がある可能性は否定できない。その検証の意味でも、一度やっておきたい。


というわけで、カットした果皮を6時間茹でてみた。


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これまではせいぜい2時間だったので、ざっと3倍である。

結果、柔らかくはなったと思う。

しかし、柔らかいかどうかはどうでも良いくらいに残念なことに、レモンが煮崩れてしまい、見た目が悪くなってしまった。レモンだけやや薄めに刻んだのがいけなかったのだけど。

柔らかさとしても、3倍の時間をかけるだけのメリットがあるかと聞かれると微妙。もしかしたら茹で方でも違うのかもしれないし、もっと茹で技術があれば時間をかけるだけの意義があるのかもしれないが、正直なところ6時間茹でるというのは生活の中ではかなり無理のある工程であり、そもそもやりたくない。夜からスタートが無理な工程では、子持ち会社員には向いてないのである。よほどのメリットがあれば考えなくもないが、今回みたいに煮崩れるリスクまで背負うことになるなら、せいぜい2時間にしておきたい。


ということで長時間茹で作戦はイマイチな結果に終わったが、気を取り直して、果汁と果皮と茹で汁の合計の80%のグラニュー糖を量り、半量を鍋に加えて溶かし、しばらく置く。

あとの工程は基本的に前回と変わらないが、前回少し煮詰めすぎた感じだったこともあり、警戒して茹で汁多めで火を止めたので、ちょっとペクチン薄めの印象。

いちおう温度、アルコール、糖度計、リンクルテスト、味見などいろいろ駆使して仕上がりを決めた。


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まあ、皮の煮崩れは気になっちゃいますね。

あと、瓶詰め時にやっぱり果皮が浮く。浮き防止的に砂糖入れたあとにしばらく置いてたんだけど、これも意味ないのかな。時間が短かった(以前は12時間程度、今回は約6時間)から?しかし効果なくて果皮とゼリーの比率だけの問題なら、置いてる間の酸化とかも気になるので、やめようかなあ。


そしてやっぱりゼリーはゆるい。

これ結局、ゼリーの固さに関してはペクチン濃度の問題ということになってきたな。ほかをあまりどうこうしても仕方ないのか。いかにペクチンを抽出するかと、それが無理なら煮詰めて濃度を上げるかということか。